【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-44-
「え、あの、俺、夏は臭いと言われるんですが」
先の平沢。“ボケ”たのだ、レムリアは気付いた。彼は笑いを操るクラスのムードメーカー。
その話は知られているのだろう、クラスの中だけでなく、鈴なりギャラリーからもひそひそクスクス。
「何?俺超有名?」
「知らない奴はこの学校にいないと思う」
誰かが言って爆笑。
「お前エンピツ臭いんだよ」
「うそマジで?男の香りじゃ無いのか?」
「私にしてみりゃみんな青臭いけどね」
奈良井まで冗談合戦に参加する。そして、こう爆笑連発では自分だけふて腐れている理由もない。
及び、多分、今の彼に正面から言えるのは自分。
「平沢君」
レムリアは呼んだ。
「はい」
平沢は並ぶ机の間をカクカク曲がりながら歩いて来、気をつけ。
レムリアは小笑いして。
「ウチのフィアンセがそうだから言えますが、それは腋臭、いわゆるワキガです。しかも自分で判るなら周囲はもっとだと思います。薬を塗るか、脱毛などの処置をした方が良いと思います」
平沢、制服ブレザーの上着をはぐってクンクン。
「……相原さんがそう言うなら。えと、みんなごめん。親と相談して対策します」
和んだような雰囲気。お開きは間近ということのようである。レムリアは平沢にVサインをしてみせると、大桑の元に歩み寄った。
「ひどいこと言った。ごめん」
手を差し出す。
大桑は目を逸らす。
「自分、見てよ。ムネないじゃん。これでそれなりのコンプレックス。でもフィアンセはそれが萌えるとかロリコンなこと言う。でも言いたいのそれじゃない。彼が言うには、自分が、誰かのために一生懸命になってること、それが好きなんだってさ。私はそれを誇りに思う。だから、私は、あなたにコソコソ陰口叩く奴も同じく許さない」
(次回・最終回)
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