アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-003-
「多分相原家の母子漫才が伝染したのかと」
レムリアは相原を指さす。
「親のせい」
相原は母親を指さす。
「突然変異」
母親は相原を指さして返した。
「あっはっは」
レムリアは笑った。
「ホラ……そういうのが伝染ったんだって……ダメだツボる(笑いのツボにはまる)」
レムリアはそう言うとパンをかじり、思い出したか再度笑った。
「あっはっは。ダメだ助けて」
「大丈夫かキミは」
「こちらに住まわせていただくに当たり、大丈夫か、はナンセンスな質問かと」
笑い涙を目尻に拭う。
相原が和んだような笑顔を見せたのをレムリアは見逃さない。ここに住み始めて以来、笑ってばかりの毎日である。母子が気を遣って演出しているようには思われぬ。この同棲を始める前にも長い逗留は幾度かしているが、その頃と変わったところは感じない。万事こんな調子なのだと納得する。
そして、自分も確実に笑う回数が増えた。相原の浮かべた和みの意味を理解する。
これまで、こんなにも笑い転げる日々を過ごしたことはない。
幸せなんだろう。自分。
相原の表情変化に気付く。黙り込んでいたからか。
「なんか思い詰めてる?」
レムリアは首を横に振った。
「ちゃう、幸せをかみしめてるって奴」
「このパン、耳まで味が浸みてて、噛みしめるとんまい(美味い)ねぇ」
それは相原の“ボケ”。こうやってすぐ笑いに引っ張り出す。但し、多く滑る(つまらない内容で失敗する)。
「ああ寒いオヤジギャグ朝から聞いた。風邪引きそう」
「じゃぁ休め」
「学が会社行っちゃえば済む話」
そこで母親が参戦。
「亭主元気で留守がイイ」
それは流行語にもなった古いCMのフレーズ。
相原は舌打ち。
「ちぇ。ハイハイ姫子ちゃん、忘れ物はありませんか?ハンカチとちり紙は?」
「残念、身だしなみに関わる部分は女の子真っ先に完璧ですので」
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