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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-006-

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 14時46分。
 相原は勤務先にあり、実験室から執務室デスクに戻り、備え付けの給茶機でマグカップにコーヒーを淹れたところであった。
 工場内“研究棟”と呼ばれる建屋で、地上部分は2階建ての白ビル。中は7割方が壁なしのオフィススペース。パソコンの置かれたデスクがズラリと並び、課ごとに机の集合体“島”を作っている。島の末端に係長なり課長なりの机が配されている。そんな状況。青い作業服の技術者達は、日中殆どが建物地下の実験室“ラボ”に詰めており、大体3時を目処に午後の休憩。相原は試験装置の使用順もあり、先んじて戻って来た形。
 相原は自分のパソコンにログオンする。CTRL+Alt+DEL。パスワード。
 経済新聞のサイトにアクセスして程なく、緊急地震速報の画面がポップアップ。但し、オフィスであり音は出してない。
「ん、来たか」
 緊急地震速報。揺れを検知し、震度を推計し、テレビや携帯電話に流すシステムとして知られる。しかし、実はテレビや携帯に流されるのは、その中でも緊急性の高いもの(「警報」と呼称)である。すなわち、

 

①最大震度5弱以上
②しかも、住んでいる地域(携帯の所在する地域)で震度4以上と推定される場合

 

を満たした場合となる。但し、研究家、専門家向けには検知情報自体は全てインターネット経由で流される。それを使ったフリーウェアの速報表示ソフトを相原は使っている。従い、単にどこかで震度3以上、或いはマグニチュード(以下M)5以上で彼の机には表示が出る。

 

Tw1

 

(速報ソフトの例。なお、壁紙は友人の筆によるレムリア (c)chabo-z2016)

 

 ここで、相原の「来たか」の背景を記しておく。この2日前、3月9日に僅かな津波を伴う宮城県沖の地震があった。M7.3であった。宮城県沖では30年程度の間隔でM7.5級の「宮城県沖地震」が発生しており、前回の同地震は1978年であるから、2011年時点「30年以内の発生確率99%」とされていた。9日の同地震はそれにも思われたが、発生場所が従前の宮城県沖と異なりプレート内部であり、規模も小さかったことから、別物、前触れ、と相原は見ていた。もってしての「本当の宮城県沖」が「来たか」であった。

 

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