【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-45-終
許さない。その言葉は教室の持つ“鳴き竜効果”もあったか凜と響き、大桑はびくりと電撃受けたように身体を震わせ、着座のままレムリアを見上げた。
彼女の着座姿勢の良さ、それを支える鍛えられた体格、とりわけ幅広の胸元は、“武道をしている”、とレムリアに教えてくれる。でも、その幅広胸の内にある心は繊細。否、繊細の故に身体を鍛え、物理的に強くなることでカバーしようとしたのだろう。
「これでも護身術レベルで“一本背負い”位はできてね」
レムリアがそう言うと、大桑の表情に笑みが浮かんだ。
“自分が武道をしていると判っている”と、大桑はレムリアを理解したのだ。
ぱん、と快活な音がし、二人の手と手が空中で合わされる。その瞬間、レムリアは判ってしまう。大桑の抱えた思いと記憶が、一気に心に走ったために。
“強すぎる女の子”として、特に男の子達に、口さがないこと言われてきた過去を。
それ故、一気にクラス男子の人気をさらい、果てにフィアンセまでいるという自分に嫉妬したこと。
目から何か出た。
「……どうした?あ、痛かった?」
大桑が心配そうに腰を浮かせる。目からこぼれ落つひとしずく。
「違う。嬉しいんだ。腹割って話が出来る友達またゲットだぜ」
レムリアは笑って見せた。上手くごまかせた半分、事実でもある。自分の人間関係はそう。最初から嫌われるか、魂の友達か、どっちか。
彼女は最初から……のなりかけだったと思うが、後者に変わった。
それは恐らく、自分の進歩と判断して良いのであろう。
「俺は~?姫ちゃん」
平沢。
「相原さん、とお呼び」
お高く止まって返す。彼にはこのノリで良さそう。
すると。
「じゃ、姫様」
ぶっ。
「だって自分で言ったし」
このツッコミは溝口。
「あきらめさない」
奈良井が言った。
こうして、彼女のあだ名が確定した。
チャイムが鳴る。
2011年1月11日午後2時10分。
転入生(但し魔法使い)/終
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