アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-007-
さて、表示された画面の表記は当初M7.2であった。地震発生から5秒後にあたる。
この時点で彼は、9日の余震とまずは思った。だが、15秒ほどで7.6に変わった。
9日より大きい。これは宮城県沖の本体だ。
リアルタイムの震度が色で表示される日本地図。東北地方に震度5弱以上を示す赤系が広がり、更に関東へ向かって南下してくる。
この赤系は関東へ達する勢い。
動こう。彼は独断した。職場防災隊の類いは良く新人の仕事にされる。なぜなら、マニュアル化された避難訓練が主なイベントであり、知識や経験は必要ない。一方で避難場所を覚えたり、名簿チェックの必要から、職場に溶け込む上で最低限必要な情報を把握せざるを得ないからである。
「地震来まーす」
彼はフロア内に声を発した。
「え?」
「相原。大丈夫か。何も鳴ってないぞ」
非難の意を含んだ疑念の目が彼に集まり、3時から本社に出向くというスーツ姿の課長が眉をひそめた。「何も鳴っていない」は携帯電話の緊急地震速報を意味する。
説明が続くが容赦願いたい。この時点、緊急地震速報は、上記M7.2の時点で、条件に当てはまった宮城県等に流された。だが、実際には地震計のデータが増えることで精度が上がり、速報の要件を満たす範囲は変化する。対して、2011年3月の段階では、リアルタイムで更新される震源情報に対応し、警報を出し直すシステムは備わっていなかったのである。このため、本来ならM値の増大に伴い、速報対象に加わるべきであった関東一円には、警報は出されなかった(NHKのテレビ・ラジオは地域によらず警報が出れば全国の放送に載せるので、他の地域でも判る)。
(推定マグニチュード・震度・緊急地震速報のタイミング/気象庁特設サイトより)
「宮城県地震の本物です。一昨日より大きく揺れます」
「相原いい加減にしろ!」
「各位机の下に潜り、ヘルメットを手にして下さい。到達まで30秒」
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