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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-011-

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 古代、地震は「なゐ」と呼んだ。「地大いに震う(なう)」などと書いた。それはこのじわじわと這い進むような大地の挙動に、縄を「なう」あのじわじわとねじる感じを重ね合わせた擬態語なのではないか。
 この本州という島体の北半分が揃って動いているのであった。
 ユサユサとした揺れが収まってくる。が、船に乗ったような揺れは続く。
 長周期地震動である。この揺れはオフィス内の移動書架を動かした。高さ2メートル幅1メートル。びっしりとレポートファイルの詰まった、明らかに100キログラム超あるキャスター付きのこれが、可動範囲の右端、左端と動き回り、がしゃん、がしゃん、と音を発した。会議室など区画していたパーティションは、合わせ目や天井との接続点に破断が発生した。ただ、関東以北の空港や体育館で多数見られた吊り天井のボードや照明の落下は、相原の職場では起きなかった。また、停電も起きなかった。
 揺れが収まり始める。人々も慣れ始める。書庫の動きもようやく止まる。ピークは過ぎたと相原は判断した。だが、長周期は継続しており、更に次の余震(14時51分)が繋がってしまっていた。トータルで5分間ほどの揺れになった。これは応じた平衡感覚のズレを惹起し、ずっと揺れ続け、翻弄されているような「酔い」の感覚を呈した。
「まだぐらぐらしているみたいで気持ち悪い」
「地震酔いです。無理して立たないで」
 とはいえ相原は立ち上がる。デスク上はあふれこぼれたコーヒーで湖。仕方ないのでボツにしたプリントアウトを並べて吸い取らせ、パソコンでニュースサイトを開く。
 唐突なチャイムと構内放送。『従業員の皆さんにお知らせします。ただいま地震を感じております……』

 

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