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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-013-

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 部長は自らもスーツ姿にヘルメットを被り、接客スペースのテレビをつけていた。ニュースキャスターが緊張の面持ち。震度と津波警報が表示され、塩釜(しおがま)からの中継画像。
「相原は安全委員のマニュアル通りに行動しているだけだ。何が悪い。それにこれ見ろ。マグニチュード8近いんだぞ。化けもんみたいな地震なんだ。従業員の安全第一が我々の役目だ。違うか。それからこの後の本社会議は中止だ。メールが来た。電車が全部止まった」
「判りました……申し訳ありません」
 課長は頭を垂れ、その横目で相原をじろり睨んだ。
「相原」
 部長に呼ばれ、相原は応じ、居心地の悪いその場を離れる。
「はい」
「ラボ室を引き上げさせ、ここに集めろ。今後の行動について全員に指示を出す。材技(ざいぎ)も招集しろ」
「判りました。各課聞いた通りです。ラボ室を引き上げさせて下さい。恒温槽(こうおんそう※)も含め全部の電源を落として執務室へ。河合(かわい)さん。給茶機のコンセント、それから給水管の破損状況を確認して下さい。ひょっとしたら貴重な水源になるかも知れない」
 河合さんというのはそのお局さんである。
「あ、はい」
 相原の指示に河合女史が応じ、相原は構内PHSでラボ室に電話する。
「一課相原です。部長指示により全員撤収し、執務室へ集合のこと。電源は恒温槽含め主幹から全落としで。繰り返しますが部長指示です」
『恒温槽も?本気か?理由は』
 ラボ室の親分格たる男性は半ば怒鳴るように返した。時間のかかる試験データがリセットされるからであろう。
「部長指示です。余震で何かが落ちたり埋もれたりして、その状況で電気火災が発生したら近づけなくなるからです。さっきのは関東大震災クラスのものすごい地震です。必ず余震が来ます」

 

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