アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-016-
今度は携帯電話アドレスからであった。相原が机の下から発信したもの。
「巨大地震、3分から5分揺れる」
「ウソでしょ?」
同じく班員で仲良しの溝口(みぞぐち)が声を高め。
その言葉が終わらぬうちに主要動が到達。震度3クラス。
文字に起こせばゴッという音と共に様相が変化し、観客が一斉にどよもし、遊園地スタッフが反応した。
「皆さん地震です。しゃがんで下さい」
「施設内は安全です。立たずに屈んで下さい」
スタッフの女性男性一名ずつ。両腕を開いて周囲の客を一カ所に寄せ集める。それは落ち着いた誘導であった。両腕を広げて行動制止、および、手のひらを頭にして守る動作を繰り返す。
「頭を守って下さい」
全員がしゃがみ込み、ショーの方がスタッフの所作から尻切れトンボになるまで30秒ほどか。
揺れが続く。
「終わらないね」
「3分から5分続くって言ってたし」
「何それ」
「めちゃくちゃ長くない?」
3分から5分続く……その時点であらかじめ継続時間が判ったことは、彼女たちからパニックの芽を一つ摘み取ったことになったのかも知れない。
30秒。
周囲がざわつき始める。
「長い」
「何これ」
パニックの芽。
レムリアは立ち上がった。
「皆さんこの地震は長く続くようです。どうぞ落ち着いて。スタッフさんの言う通り頭を守って。もし怖いようなら足踏みするのも有効なようです」
「おいコラねーちゃん、いい加減なこと言ってるんじゃねぇぞ!」
底の浅そうな男の発言。が、言い返す前に、1分30秒の“その瞬間”。
確かに北東、丑寅の方角より、大地の鳴動が走ってくるのが聞こえた。
身体で、感じられた。
蹴立てて走ってくるような、ゴゴゴゴという地響きであった。
ギシッ、大地の音であった。
大きな揺れが遊園地を見舞う。ユサユサと左右に揺れる。
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