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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-017-

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「お客様!しゃがんで!」
「スピーカーから離れて下さい!」
 スタッフの声。上ずり気味になるのは仕方がないか。
 対し、客は幾らか悲鳴を上げたが、阿鼻叫喚への遷移は無かった。
 ただ、それは、パニックと言うより、想像を絶する恐怖に固まってしまったと書いた方が適切と言えた。
 レムリアの目の前で男の子が母親に抱きすくめられ、それでも怖いのか、がたがた震えるので、思わず一緒になって男の子を抱え込む。
「あらありがとう」
「いいえ怖くて当然。でも、大丈夫だよ」
 男の子の背中をさする。手を握り、頬に手を触れる。
 地が、震(な)った。
 大地は自身が巨大な発音体となり、無数にちぎれるような音を立て、そして捻れるように動き、左右にも動いた。それは巨大な生き物がのたうつようであり、海面をスローモーションで見るかのよう。地面が波打ち走って行くのが目で見える。
 しゃがめ、の意味を理解する。そも、立っていられない。
 本物の巨大地震に遭遇したのだと意識が結論を寄越す。
 PA用スピーカーポールが倒れ、伴い若干の悲鳴が生じるが、直ちにスタッフが現場に駆け寄る。
 彼らはどれだけ訓練を受けているのか、レムリアは感銘を受けた。普通なら、自分自身怖いはずであり、どこかへ逃げたいはずである。起震車で馴らされたのだろうか。まぁ、どうでもいいが。
 ポーンと鳴って自動音声放送。「ただいま地震を感じております。お客様にお知らせします。当施設は安全です。ガラスから離れ、スタッフの指示に従って下さい。詳しいことは判り次第随時お伝えします。Attention……」
 以下英語で同内容。落ち着いた、明瞭な発音の男性の声だ。
 それはブザーやサイレンを使わないことも含め、甲高くキャーキャー喚く女の悲鳴と対極であり、落ち着かせる効果を持つのは明白であろう。

 

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