アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-021-
もちろん、津波を知らぬ者の無い日本では被害規模に差は出よう。だが、放っておいても大丈夫、では決してない。大体、今聞いた限りですら、テレビの物言いとUSGSの数値には大きな開きがある。
すなわち。
テレビの言う3メートル6メートル、それより遙かに大きな津波が来るんじゃないのか。
その可能性こそが周知すべき内容ではないのか。
「気仙沼って……どうなるの?」
レムリアは少し怖い気持ちで訊いた。
田立が押し黙ってレムリアを見つめる。
『誰かの親類がお住まいかな?きわめて危険だ。直ちに逃げるべき町だ。ただ、現地が停電していたりすると情報が周知されない可能性がある。防災無線が機能してればいいが』
その時、田立の心配に対して、レムリアが持っていた答えはただ一つ。
「アルゴ号を出そうと思う」
『ああ行こう、俺も……』
相原はすかさず応じたが。
「学はそこに残って。道具とかの問題じゃなく、宇宙船だって地球側管制がいるでしょ。日本の地勢や政府の動きを知る人の情報と指示が欲しい」
相原は僅かな躊躇……否、衛星電話ならではのタイムラグ。
『了解した。行け。行ってその誰かの親族と、三陸に住まう皆さんを多く助けろ。いや……』
日本を助けてくれ。
「了解。じゃぁ次は船で」
『判った』
レムリアは電話を切り、発呼し直す。
「みんなごめん、私救助隊に参加して三陸行ってくる」
隠しておく事態ではない。が、当然、班員達の反応はきょとん。
「は?」
「姫ちゃん何言って……」
「今更だけど溝口さんの見立ては実は正解で……先生に言っといて。姫様時代のボランティアに空飛んで向かいましたって」
「ちょ……」
「溝口さん知ってるの?」
困惑する仲間達に、しかし説明しているヒマは無い。なお、溝口という娘はレムリア自ら班に引き入れた。彼女は少し心のケアが必要な部分があり、自分と自分の味方のそばに居た方がいいと思ったからだ。その経緯で自分の出自を教えてある。必要最小限は説明してくれるだろう。
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