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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-023-

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 端的には通信機である。耳にはめて程なく、ピンと甲高い音が聞こえた。信号受信。および、
“まもなく到着するが準備は良いか”
「Roger」(いわゆる「ラジャー」)
 レムリアは答えて、耳栓機械を指先でタッチ。
 機械先端のボタンを押した。これで、通信確立に伴うピン信号(ping)が送られた。
「来たから、行ってくるよ」
 レムリアは走り出す。走り出した彼女を見、園のスタッフが制止をかけるが、聞くわけに行かぬ。
「ちょ、姫」
「姫ちゃん待って全然わかんな……」
 仲間達は追いかけて来た。
 そして、目撃することになった。
 園内の池に、それこそ、この園がテーマとする魔法の国よろしく、空から船が降りてくるのを。
 ピーターパンの旅立ちのように、大きな帆に風を孕んで、帆船が空から降りてくるのを。
「あ、ピーターパンの船!」
「再開するの?」
 幼い声や、いぶかしむ声。
 船は水鳥のように着水し、向きを変えてすーっと進み、岸壁に立つ彼女の方へ。
 三本マストの帆船である。サイズは中世大航海時代、大洋横断に使われた帆船に匹敵する。ただ、畳まれたその帆の姿は四角四面であり、近代工業製品のそれと認識させる。
「了解」
 彼女は答えた。実際にはこの前に『近づけないから甲板からハシゴを下ろす』という声が来ている。カーブしたプラットホームでは列車との間に隙間ができるが、同じ理屈で池のサイズと形状から接岸できない。
「あの……お客様……」
 スタッフが背中で声をかけるが、応答も説明もどうにもなるまい。程なく甲板に男が現れて伸縮式のハシゴをガラガラ伸ばしてこちらへ突き出す。
 レムリアはそれを手で受け、目の前、金属柵の上に載せた。
 余震が来、ハシゴと岸壁の部分が動く。
 すると、抑えるいくつもの手が伸びてきた。
 仲間達の手であった。

 

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