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2016年8月24日 (水)

天使のアルバイト-072-

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 父親が合流。テーブルに何も無いのを目にし。
「あれ?まだ買ってないのか?」
「銭」
 母親が手を出す。
「持ってるだろうが」
「財布にあるけど財布がいやがって出てこない」
「しょうがないな。ホラ」
 父親が紙幣を出し、母親とエリアが連れ立ってカウンターへ向かう。釜飯は常時大量生産状態であって、待ち時間は必要ない。前払いし、横で受け取る。
 釜が揃って程なく昼食となる。由紀子は結局、この地の特産であるリンゴやブドウを材料に使ったスナック菓子を買ってきた。
「いただきまーす」
 釜の蓋を開く少女二人。
“天上より遣われし者、釜飯を食らう”
 そんなフレーズが頭に浮かび、エリアは一人ひそかに笑う。仲間うちで自分くらいのものだろう。しかし、それを自慢できる日が来るかどうか判らないことに気付き、ふと不安になる。
「エリカ?」
 由紀子がエリアの変化に気付いて声をかけた。
 と、変化なんか気にもとめない父親が。
「娘達~」
 と呼び、小型のデジタルカメラを構える。
 二人は箸を片手にカメラに向かってピース。
 の、背後に母親が顔を入れてシャッター作動。
「お前な。俺は娘達が可愛いから撮ってやろうと」
「私も娘ですよ。私の母親から見れば」
「そうか?360度上下左右、どこから見てもいかにも母親って感じだが?」
「そうしてしまったのは誰さ。忘年会でイヤに酒を勧めるなって思ったら、気が付くとこんな」
 母親、由紀子を指差す。
「ああなんて不憫な娘でしょう。愛じゃなくて酒の勢いと若気の至りで出来たなんて」
「ああ母さん。私って不幸なのね」
 二人抱き合って泣き真似。
 エリアは例によって笑いすぎて食事が進まない。こんな家族漫才やるほど仲のいい家庭って他にあるのだろうか。
 殆ど観客の気持ち。
 

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