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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-027-

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『了解。全部コンピュータに指示として理解させた』
「承知した」
 相原は頷いた。つまり、船のコンピュータが相原の言葉を理解し、自ら津波到達のシミュレーションを行い、喫緊と思われる場所から避難支援を実施すると把握した。
 画面が変化する。レーダの画面が元の位置に戻り、大スクリーンにはビデオの早送りのような画面が流れる。
 高速で移動しているのである。海岸線を越えて市街地。
「相原……」
 これは背後から部長の声であった。
「はい。あ、部長、申し訳ありません。勝手に使っております」
「今のSAR画像は当社のものか?」
「いえ、このシステムで繋いでる国際救助隊のものです。去年アキバに落ちてきたあの船です」
 すると部長は小さく「おお」と言い、
「知り合いがいるのか」
「はい。津波はこの位置で5メートルなら三陸リアス式で30メートルは優に超えようかと。船には救助に向かわせたいので、津波のリアルタイムはウチの衛星で取れればベターです」
 相原は作業服の胸ポケットからペン型のレーザポインタを取り出し、赤い輝点でグラフィック地図の波を示した。
 ここで津波の特質を少し記しておく。“波”という字があるが、海岸に打ち寄せる波とは大きく異なる。海底に生じた高低差が水面段差となって伝搬して行く現象である。深海を進むとき、その波長は“盛り上がった一帯”そのものであって、数キロから数10キロに及び、仮に波の上にいたとしても、波の有する“山”“谷”を感知することはできない。伝搬速度は時速500キロから1000キロに達する。“ジェット機の速度”で進むのである。

 

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(学研の図鑑「海」より)

 

 そして陸地に近づくと浅くなり、行き場を無くした水は高く持ち上がる。後から続く水に押されて更に高く持ち上がり、溢れるように陸地へ流れ出す。洪水とした方が実際の説明に最も近い。なお一気に波が高まると映画のように壁を成してなだれ込む。この現象を段波(だんぱ)と呼ぶ。

 

(つづく) 

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