アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-030-
グラフィックが構成され、海を行く津波の姿が3次元で浮かび上がる。ちなみに、外洋にいる津波は、先にも記したが“波”の姿を呈しておらず、キロメートルのオーダで緩やかな盛り上がりとくぼみを有するものだが。
ものだが。しかし、この津波は違う。小山のような盛り上がりが見て取れる。
外洋の時点で盛り上がっている。これが岸に近づき更に高くなるのであるから、すさまじい水の壁になろうと推察できる。
「現在地」
相原は訊いた。スクリーンに定規をあてがい、最初に津波が達する地点を予測する。
『大船渡(おおふなと)。広報開始しました。下からは飛行船に見えているはずです。ただ防災放送と声が被ってしまう』
それはすなわち、大音量で避難を呼びかける飛行船として、地上の人々には見えている。
それはすなわち、大音量で避難を呼びかける飛行船として、地上の人々には見えている。
「場所はそこで結構だ。被るなら録音して同期して流せ。みんな逃げてるか?」
相原は言った。
『携帯電話を追う限りは……大きくは逃げる方向ですが、逆に海岸へ近づく動き、動かない端末、いっぱいあります』
「テレパス、近づく動きの意図が読めるか?」
『多くは家族への心配です。年老いた親がいる。学校に子供がいる』
相原の問いに副長セレネが応じた。テレパスは言わずもがな超能力テレパシーである。船にテレパス使いはレムリアと、この副長セレネ。常時繋がっている他、連携して“心の悲鳴”を検出し、救助活動のトリガとなる。この点、現状の科学技術では不可能なのだが、将来的には、発汗や心拍で“パニック”や“焦燥”は検出可能になると思われる。
果たして、レムリアの報告に相原は舌打ちした。そして。
「子供を心配している端末の電波補足可能か」
『できます』
「じゃぁ……」
相原は振り返って走り出そうとし、背後の面々に気付いた。
同期、および1年2年早い入社の先輩達だ。ノートパソコンやネットワークケーブルなどを持って立っている。
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