アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-032-
相原が頼んだのは、自治体の避難放送を文章化して
・企業や学校への一斉指示
および
・親族に対して『避難完了したので安心して逃げよ』の指示。
である。これらはデータベース登録しておくことで、各種警報に連動して送出することが可能であろう。また2014年以降、子供に携帯情報端末を持たせる事への要否が盛んに議論されているが、登下校中の子供に情報を届ける手段で最も確実なのは携帯電話である。最もこれは、緊急警報放送の受信専用装置のように、単機能端末として持たせることも可能であろう。
まず救うべきは子供達だ。この見解においてアルゴ号も相原も揺るぎない。
『2報、3報受信した』
「了解。限界だ。次へ」
『えっ?』
相原の発言にレムリアは目を見開いた。全員避難できたとはとても思われないが。
首肯したのはアルフォンスス。
『レムリア、私も相原に賛成だ。ここは全体最適だろう。消防や警察も動いている。我々が出来ることはした。それでも動かぬ1人より、事情を知らぬ100人だろう。できるだけ広報し、尽くしたところで具体的な個々救出に移る。家屋内にとどまったままの方の有無、その座標は同定した』
『判りました。あっ』
レムリアは唇を噛むような表情を見せ、次いで腰元に手をした。
大画面に子画面が開かれて“メール着信”。
田立が送った祖母の画像メールがレムリアのアドレスにようやく着信し、ブラウザメールで船のコンピュータが開いたのである。
『レムリア。中の住所をプロットするかと船が聞いていますが?』
セレネが訊いた。
『友人のおばあさまです。連絡が取れないとか』
『行け。相原どう思う。妥当か』
「気仙沼と聞いた。直ちに行くべき」
相原は船のコンピュータがシミュレーションした動画を取り寄せ、いつ、どこに、を見ている。もちろん、ほぼ同時にいくつもの市町村に津波が襲来している。全ては無理である。このことは広報・救助の仕組みをきめ細かく配置する必要性を示唆する。そして船は最も津波到達が早いと見られた大船渡に向かい、そして今、約束を守るために気仙沼に向かうのである。
『座標同定。全速』
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