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天使のアルバイト-076-

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「エリカ」
 母親が呼ぶ。
「はい」
 エリアは緊張する。“異能娘”扱いされるか。
「あなたは、出会う人みんなを、元気にする、魔法があるようだね。うちの子含めて」
 母親は由紀子を指差しながら、ゆっくりと、言った。
「見過ごせないんです。知ってて無視するって、ものすごく後ろめたくて」
 エリアは少しホッとし、目を伏せながら言った。
 そのくらいなら、いいか。
 そこへ父親がようやく到着。
「楽しそうだな。何かあったのか?」
「女の秘密」
 母親がクールに言い、由紀子と連れ立って歩き出す。
「ちぇっ」
 父親が拗ねた子供のように唇をとがらせ、母親からチケットを受け取る。
 エリアはくすくす笑いながら一家について行く。
 美術館は中に絵画、外に彫刻などのオブジェ。毎正時には鐘が鳴る。
 一巡りし、一家が美術館を出てきたのは、夕刻に近い頃。
 太陽はすっかり高度を下げており、眼前にうねり広がる草むらは、柔らかな夕刻の金色に染まっている。
「うわーっ!」
 眺めに引き寄せられるように由紀子が走り出す。風が渡り、金色の草波がキラキラ輝きながら、太陽へ向かって流れる。
「素敵…」
 草の中に立ちつくす。赤毛のアンが詩でも考えてそう、そんな雰囲気。
「姫と姫、こっち」
 父親が少女達を呼び、二人は目線を父親のカメラに向ける。
 シャッターが切られる。
 父親は液晶画面の画像を確認し、
「もういちま……聞いてねえな」
 もう一枚撮りたいらしいが、由紀子らには聞こえていない。
「ねえ由紀子ちゃん……」
 エリアは金の陽射しに照らされる由紀子を呼ぼうとし、ギョッとした。
 
“終わりが近付いている”
 
 それは……こう言っていいのだろうか“予知”の感覚。
 それがふと、心の中に生じた。
 そして、不安が居座った。
 

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