アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-033-
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気仙沼市。人口7万5千(2011年初時点)。内陸の一関市より東方へ45キロ。仙台より北北東およそ100キロ。三陸リアス式海岸の一部をなし、良港を得て漁業・水産加工が主な産業である。沖合至近に大島を有す。
東北地方太平洋沖地震においては震度6弱を記録し、15時15分から20分ごろより津波が襲来、川に沿って内陸4キロまで遡上、15時35分までに市街地、沖合の大島が広く浸水したほか、漁船燃料、プロパンガスタンクなどを火元とする大規模な火災が発生、湾内が一晩猛火に覆われるという事態に至った。地震、津波、それらから派生する災害が次々と市域を襲ったのである。とりわけ、“津波火災”については、火を消すべき水が逆に炎を広げたという点で人々の想像を絶し、この未曾有災害の凄絶さを象徴する事象のひとつである。人的犠牲は、市のウェブサイトによれば、1,353人(内訳:直接死1,015人、関連死107人、行方不明者231人)。
アルゴ号が到着する。テレビ会議の画面に現地空撮。15時18分。曇っているようで市街地は明確で無い。一方で津波の浸水なども見えない。
『市街地に来てる。指向性音波使って一人一人広報中。沖合5メートルって情報もらったけど……5メートルなら大丈夫じゃないの?』
レムリアは相原に訊いた。川沿いに堤防が配されているが、いずれも数メートルの高さはあり、浸水してもさほどでもなさそう、に見える。ちなみに、沖合5メートルは海上検潮装置のデータである。
「だめだ。街の形をよく見ろ。奥へ向かってVの字になってるだろ。押し込まれた水はその勢いで盛り上がるんだ。お友達の親族の住所は?」
空撮に画鋲型のアイコンで住所がプロットされる。港湾部より南方、沿岸から川沿いに4キロ。なお個人情報を辿ると病院の診察記録に行き着き、足が不自由で人工透析必要。
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