アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-035-
デイケアサービスの方だと判じた。このあたりテレパス。
「彼女の同級生で相原と申します。津波が来ます。直ちに避難を」
ストラップで首から下げたタブレット端末を使い、送ってもらった彼女の写真を女性に見せる。次いで衛星“ガイア”がたった今捉えている津波データをCGアニメ化したもの。
そこには、映画のような壁の如くそびえ立つ波が押し寄せる姿はない。だが、今まさに川を遡る流れは見える。
相原からピン。
『言い伝えを見つけた。“大島が3つに割れる大津波”が来る。そのまま』
「大島が3つに割れる程の大波とも予想されています」
レムリアは言った。しかし佐藤という女性は首を傾げる。レムリアは気付く。一般に古い伝承を若い人は知らない。
「佐藤さんや」
奥方、家屋より声があった。おばあさまであろう。
レムリアはすかさず声を出した。
「狩野さゆりさんですね。私、田立美由紀さんの同級生で相原姫子と申します。救助脱出を依頼されて参りました。大島が3つに別れる大津波と言われます。呼吸補助、透析の設備は私どもの船に装備して御座います」
佐藤さんを納得させている時間は無いのだ。レムリアは背後の船を指さして佐藤さんに見せ、門扉より庭へ入り込んだ。
遠雷に似た大きな音が聞こえ始めたのはその時である。
相原からピン『気仙沼津波監視システム損壊』
それは港湾部より津波が市街地へ流入開始したことを意味した。
もちろん、非常な大規模で。
気仙沼市街地とこの地域とは数キロの距離がある。それは津波において数分の差を意味する。
数分。それを最大限活用し、一瞬でも早く、この約束を果たし、街中へ救助に行かねばならぬ。
「ちょっとあなた……」
追ってくる佐藤さんに目もくれず、レムリアはタブレットの画面を車椅子の老婦人に見せた。もらったメールの文面と、写真。
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