アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-038-
津波は、現象としては海からの洪水であり、果てしなく水位が上昇して行く、と書けるであろう。足下にさーっと水が流れ来、次いで水深が上がって行く。その水深の上がり方が“あっという間”。恐らく、水に濡れて気づき、逃げようと思った次の瞬間には身動き取れない。卑近な比較としてあなたは風呂の中で“スタスタ”と歩けるか。まして逃げるなど。
“1メートル”の津波でも水は胸まで来る。
そんな過程を経たのであろう、人の姿が波間に漂う。
「人です」
『把握。今助けます』
船は助けに来たと音声を発しながら、波間に漂う人に近づいた。
振り返った口ひげで男性と判じる。船体から縄ばしごを下ろし、大男がそこからぶら下がり、男性を抱き上げた。
そこで別の心の悲鳴を拾った。が、一瞬で消えてしまった。家の2階で津波やり過ごすと安心した次の瞬間、家ごと、といった所のようだ。それは過去認知……ポストコグニションの物言い。でも、エスパーで判っても何の役にも立たない。
能力の限界であった。“全ての人が”“事前に”知っておかないと何の意味もない。確実な広報、広報に基づく全員の確実な行動、全員の移動手段、この三点を担保するのは永遠の課題であろう。いずれかに制約があるなら、最初から安全な場所にいるしかない。高台居住や避難タワー等である。
『思うな!』
「はい」
一喝を受け、引きずられるような悔しさをレムリアは振り払った。今救える目の前を救って行く。それ以外何が出来る。
救った男性が保持ユニットに運び込まれるのをタブレットで確認する。作業にはその佐藤さんが手伝ってくれる。現在、船内には3人。
そのまま任すことにし、津波に目を戻す。乗用車が流されており。中に人がいる。
『主加速コイルを使え』
船長の指示。船は粒子線を制御して動力を得ており、そのための電磁石を内蔵している。
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