アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-039-
強大な磁力でクルマを吸い付けるというわけだ。具体的には船底をクルマに押しつけ、機関出力を上げる。
ゴツン、という鈍い音と軽い振動。
『そのまま高台へ動かして下ろせ』
『レムリア個人宅が波にのまれます』
セレネからの報告。が、クルマを動かしていると時間が足りない。
相原からピン。
『そのまま海面を走れ』
「任せろ」
シュレーターが答え、船は車を磁力でぶら下げたまま、黒くうねる海面の僅か上を滑走する。高度を取ることすらもどかしいのである。フェリーやタンカー、中小の漁船が波間を漂う。
「人的反応は?」
通過しながらそれら船舶をサーチ。
『探知範囲になし。船の動力や電源、レーダ、エコーも検知せず。画面内各船はいずれも係留中に流されたものと判断』
『今は目前に注力で良し』
「了解」
船は港を越え、街路だった地域を抜け、
今まさに、黒い水に飲み込まれんとする、2階建て住宅を視野に捉える。
住宅の2階ベランダに幼い子を抱いた母親、その前に両腕を広げる男の子。母と幼子を兄として守ろうというのか。
甲板にはレムリア。両脇には大男二人。
双方長大な銃器を抱えている。アリスタルコスのレーザガンであり、ラングレヌスのFEL(自由電子レーザ)マシンガン。立方体をいくつも重ね合わせ、長い銃身を伸ばした無骨なスタイル。要はどちらも強力なレーザ。
母子が宙に浮かび近づく船に気づき、レムリアは母子と目を合わせた。
「ベランダを焼き切ります!少し下がって」
レムリアは叫び、応じて母子は室内に下がった。
赤と新緑の光束が空を切り、ベランダのフェンスが切り取られ、倒れた。
切り欠いたそこへ舳先をくっつける。水深が上がって1階の屋根に達する。
残された時間は一瞬。
「こっちへ!」
レムリアが言うよりも早く、大男が乗り移って母子を甲板へ移動させる。船内6名。車1台。
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