アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-040-
黒い水が階下から2階へ吹き上がってきた。
限界である。船は車ぶら下げて浮上し、宙を進み、高台の学校とおぼしき人々集まっている場所へ向かい、クルマを下ろし、次いで着地。
「車中に閉じ込められているのでお願いします」
瞠目の人々にお願いする。続いて舷側のゲートを開いて。
「さ、君も。そこから下に降りられる。お母さんと弟を守るんだぞ」
ベランダのお兄ちゃんの頭をぽんぽん。
「あの……」
するとお兄ちゃんはとんでもないことを言った。
自分の小学校にまだ児童らが沢山いるはずだというのだ。
「なんで?」
「親が迎えに来るまで待機なんです。僕は近いし、母がこんなだから帰らせてもらえて……」
「学校はどこ?」
タブレット端末のマイクを向ける。
6
彼の口にした小学校はタブレット画面上にすぐさま表示された。
「ここの屋上?」
3階建て校舎の屋上に集まっているという。海抜と建物の高さ、現時点の津波の高さを勘案すれば。
送り込まれたシミュレーションCG画像は残り時間1分。
行くべきはたった今。
『行け!』
船長が言い終わるより早く船は走り出した。母と幼子のみを下ろし、ゲートを閉じ、大男が船内へ。船内4名。
レムリアは男の子と甲板上。
この地方に雪が舞い始めたのはこの時である。街全体が黒い水に覆われ、様々なものが浮かび漂い、火災の煙が方々に上がる。
街と生活の全て破壊された光景の中を船は走る。
「あそこだ!」
男の子の指さしたその場所は、黒い水がほぼ3階校舎屋上に達した状態。
『78名』
合成音声。船がカウントしたのであろう。問題はその次である。救う、すなわち船に乗り移らせる。
78名をどうやって短時間で。
イヤホンにピン。
『帆を使え!』
相原であった。
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