天使のアルバイト-081-
そして今日も、子供達はエリアの顔を見るとニコッと笑う。
「ふーん。不思議よねえ。何でこんなにあなたには懐くのかしら」
母親が乳飲み子にエリアを見せる。エリアが手を出すと、ニコッと笑って小さい手を精一杯伸ばしてくる。
電話が鳴った。
「おーいエリカちゃん」
父親が声を出す。手が離せないから電話にでてくれと言う意味。
「はーい」
エリアは答えると、小さな手を離し、電話へ向かった。
そして受話器を取ろうとし、
「!」
気付く。ロクでもないこと。
そう直感したと同時に、エリアの心の中が伝わったか、子供達が泣き出した。
エリアは一瞬躊躇する。しかし単なる気のせいだったら困る。
エリアは受話器を、取った。
「はい……沢口不動産……」
刹那、相手が沈黙。
そして。
『あの……私、県立……』
相手は大人の女性であり、高校の教員である旨名乗った。
『由紀子さんの、お母様で、いらっしゃいますか?』
その声は、意図して、ゆっくり話していると判る調子。
エリアは通常の用事ではないと判断した。さもなければ、授業中であろう2時過ぎに、教員が電話などして来るものか。
もちろんイタズラという危惧はある。しかし、それならそれで、学校に問い合わせれば済むこと。
父親に繋ぐ事にする。
「私、電話番の者でして……お父様ならいらっしゃいます。……由紀子ちゃんに何か?」
エリアのセリフに父親が席を立つ。
「お待ち下さい」
歩いてきた父親に受話器を譲る。
「お電話変わりました。沢口由紀子の父でございます。あ、樋口先生、由紀子がいつも……あいつまた何かしました?。は?はあ。え?……」
父親の目の色が変わる。
エリアはゾッとして父親の顔を見た。
予感は嘘ではなかった。イヤな言葉が意識をよぎる。
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