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天使のアルバイト-080-

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 コップ片手の指摘。そのコップに店長が燃料補給。
 由紀子はきょとんとした目でその言葉を受け取り、自らを見回し。
「……言われてみれば……そう、かな?あたしはあんまり変わったって気しないけど」
 そう言って、再びモチをくわえて伸ばした。
「その食欲!あんた、エリカちゃんに感謝しな。彼女来てから前よりいいのは確かなんだから」
 母親が言った。
 すると由紀子は微笑みを浮かべて。
「あひはほ」
 モチをくわえたまま。
「ほほひはひはひへ」
 エリアは同様にモチをくわえて答える。そして、心から思う。私達、このままうまくやって行けたらいい。
 でも、秋のあの日、高原で感じた“終わりが近い”感覚は、今もなくなってはいない。
 一体何が……。
 
13
 
 新学期。
 金曜日であり、スーパーのシフトの関係でエリアは沢口不動産の事務所に来ていた。
 こちらでの彼女の役目は雑務……古典的表現をすればお茶くみである。ただ、しばらくいれば商売の内容も判るもので、例えばお客さんが待っているときなど、エリアが応対し、挙げ句に捜している物件がどんな感じのものか、聞き出したりすることもある。この点で、スーパーでの接客経験は極めて役立ったと言える。
 しかし、今日はどちらかというとヒマ。父親は店の奥で事務のパソコン叩き、母親はお客と物件を見に行っている。店内には母子連れ二組。但し客ではなく、保育園から子供を引き取って帰る途中の近所の人たち。
「ねえ、エリカちゃんってさあ」
 母親の片方が尋ねる。
「はい?」
「保母さん……ああ、保育士か。って、やったことあるの?」
「ないですよ」
 エリアは答えた。“スーパーの金髪の娘に子供を会わすとおとなしくなる”は、もはや近隣に知れ渡っており、スーパーにはもちろん、こうして不動産屋の方にも時々母子連れが遊びに来る。
 

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