アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-046-
『オレだ。アルゴ号に漂流漁船が接近している。漁船には人体存命の反応あり』
相原が言った。タブレットにはレーダ衛星の画面があり、漁船がこちらへ流されて来る様子がCGで描画されている。
レムリアの一瞬の沈黙を、相原は迷いと受け取ったようだ。
『その風圧が漁船を押しのける。アルゴに衝突することはない。ただ放っておくと漁船は流される。ワイヤハーケンをランチャーで打ち込め。今の救助が終わるまでアルゴにぶら下げろ』
彼の言葉に記憶が巡る。南極クレバス下へ救助活動に行った時のこと、船の持つ銃器の一つ“プラズマガン”にオプションの砲身を取り付け、ハーケンを氷壁に打ち込んだことがあった。
「了解!ファランクス!プラズマのオプションはどこ?」
レムリアは訊いた。“ファランクス”とは双子兄弟を彼女がまとめて呼ぶ時のあだ名。どっちでもいいから教えてと言う意味だ。なお、ファランクスとは古代ローマの“密装歩兵”を意味する語である。
『オプションは武器庫奥の予備電池の隣だ。ハーケンもそこにある』
アリスタルコスであろうか答えた。相原との会話から彼女が動くと判断したようだ。
『重いからな。あと、プリチャージがいるからまず電源入れろ。PSCで動かせ』
「ありがと。一度使ったよ。……ごめん、ちょっと別の救助をするから同じ要領で頼んでいい?」
アリスタルコスに答え、搬送を子供達に依頼する。
「あ、はい。わかりました」
「気をつけて」
強い瞳に託して走る。船の銃器を手にするのは久々である。その南極活動の後、それこそ相原を助けるために銃器抱えた。
ハシゴを登り、保持ユニットを通り、運び込まれたお年寄りの状況をそれぞれチェックし、酸素吸入器を調整したりし、船倉内先端にある武器庫へ走る。イヤホンのピンでロック解除。ドアを開くと黒光りの長身。
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