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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-049-

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『さすがにハーケンではきついだろう……甲板、総員操舵室に待避せよ。おやしお丸をそこに載せる』
 船長の断。
「了解」
『了解』
 レムリアは銃を柵から外した。
「みんなありがとう。この上に別の船を載せます。みんなは船の中へ移動して下さい」
 子供達に甲板下へ通ずる階段を示した。
 その階段から、ラングレヌスが顔を出す。
「みんなこっちだ。操舵室、ゼロベクトル解除よし」
「解除する。流入する波に注意」
 風圧を停止すると単なる空間であり、風呂の栓抜かれたように周囲から施設の屋上より海水が流れ込む。
 巨大な排水溝に流れ落ちる滝の如し。どうどうと流れるその油臭さと色の黒さ。明らかに重油の如きものが漂っているのであった。相原の危惧するようにこの油はやがて火炎をまとってこの港を覆うのであろう。

 

 火を消すはずの水が、街を沈めながら、なおかつ、火を広げて回る。

 

 津波は、浸水だけでは終わらない。

 

 船長からピン。
『流入に乗っておやしお丸接近。先回りしすくい上げろ。甲板待避完了したか?』
「救護者は待避完。残っているのは乗員だけです」
 レムリアは答えた。自分を抱き支える腕あり。両肩にアリスタルコス、ラングレヌス。頼もしい大男の双子。なお、彼らはダイビングスーツに似た防弾のツナギ作業着を着ており、腰元からはランチャーと同じワイヤが出ていて、船の柵にフックを掛けている。転落防止。
『了解。おやしお丸に救助する旨のモールス送信。甲板は各自注意』
 大男達の腕に身を預け、自分自身の固定。船の柵とウェストポーチを下げたベルトをワイヤでつなぐ。
“おやしお丸”が傷だらけで視界に出現した。焦げ跡や無数の擦過痕、塗料痕。巨大建造物や他の船舶との衝突、炎の中をくぐり抜けてきたことを物語る。挙げ句にたどり着いた、自分達の船。

 

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