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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-050-

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 この船、ここで救うのは自分達。
 アルゴ号は舳先を故意に水没させ、文字通りおやしお丸をすくい上げた。
 ギィと軋んで甲板に船体が載る。折れた舵。ぐにゃりと曲がったスクリュー。
 甲板からこちらを見やる漁師の皆さん。
 その向こう。漂う大きな影。ピン2発。すなわち。
『重油タンク接近!浮上する。INS準備できない。耐衝撃注意』
「何か掴まって下さい!」
 レムリアは“おやしお丸”と甲板に声を発した。
 加速Gが印加され、グッと身体が押しつけられる感じがし、船体が大きく傾いて転進しながら空中へ飛び上がる。
 上昇し、気仙沼の港湾周辺が一望の下に収まる。黒い水が覆い、各所に炎。更に港の中心では、流された船が渦巻くように動いている。
「なんだこりゃ……」
「終わりだ……」
 漁師のお父さん達から声。おやしお丸の船内は8人とか、生存96。
「ねえちゃん。AEDとか言ったが?これだ」
「しかしすげえな。空飛んでんだ?」
「ありがとうございます。高台へ向かいます。子供達と、介護施設のお年寄りと、皆さんが現在乗っている状態です。下ろさせていただいて、引き続き救助に向かいます」
 高台の学校に多く避難していると把握して急行し、船を下ろす。爆風起こすわけには行かず、帆を広げ、滑空して校庭へ。
 船が別の船を載せて空から降りて来たわけで、尋常ならざる光景となったわけだが、説明しているヒマは無かった。
 子供達が動いてくれ、ストレッチャーのお年寄りの搬出や、AEDの装着と作動、及び学校内部の大人への報告に走ってくれる。
 おやしお丸にはハシゴを立てかけ、アルゴ号を経由して下りていただく。ここで船内救助者は一旦ゼロだ。
 イヤホンにピン。
『大船渡に戻るぞ。座標登録した各戸が危ない』
 それは気仙沼に来る前、“後で助ける”としてマークしておいたところ。

 

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