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2016年11月 9日 (水)

天使のアルバイト-083-

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 エリアはその目が見られない。何か濡れるものが視界を邪魔して父親の像を結ばせない。
「大丈夫かい?」
 父親は卓上のティッシュをくれた。
「すいません」
 拭き取る。ここで泣いてどうする、という気持ちがようやく沸き上がる。確かに非常事態だが、どんな事態なのかまだ判っていないではないか。
「大体判ったと思うが、由紀子が倒れて病院へ運ばれた。で、ちょっといつもの医者じゃ手に負えないらしくて大きな病院へ。すぐ行くから店閉めて。それから僕が用意している間に明代(あきよ)に電話を。君も一緒だ」
「判りました」
 父親は言いながら、慌ててパソコンを終了させる。
「明代に伝えて。駅の出口で落ち合う。時間は12時。クリーニング屋の看板の前」
「はい」
 エリアは答えると電話を手にした。
 鼓動が激しくなっているのを感じる。指先が鼓動と共にびくびくと震える。その指先を反対側の手で抑えながら、沢口明代……母親の携帯電話にダイヤルを始める。
 母親はすぐに出た。
『もしもし?』
「あの……エリカです。あの……あの……」
 
14
 
 市内の総合病院。
 周辺の市町村を含めても大きな方で、駅から1キロほどのところにある。広大な駐車場を有し、複数の病棟を並べている。権威と呼ばれる医師や、博士、或いは名誉教授の号を持つ者も在籍し、学会発表レベルの大手術を執行することもあるという。ただ、沢口夫婦としては、ここに“機械的”という印象を持っており、由紀子の主治医をここから選ぶつもりはなかったという。患者が人間ではなく、ベルトコンベアに載った修理品のように扱われている気がしてイヤだというのだ。先の正月の風邪のように、行きつけの休診時に仕方なく訪れることがある程度、だという。
 
 

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