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天使のアルバイト-085-

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 余程のことに相違ない。
 看護師は頷くと。
「あ、はい……お待ちしてました。こちらになります」
 即座に答え、一同を先導するようにきびきびと歩き出す。その応対に、由紀子の症状は“極めて”重篤であるとエリアは判断する。
 さもなければ、こんな短時間で、言われてすぐ判るほど、看護師さん達に浸透していない。
 要は、彼女の容態変化に目を光らせろと指示が出ているのだ。
 不安と怖さ。
 イヤな、イヤな、とてもイヤな感じ。
 その感じを抱えながら、看護師について行く。病室エリアを抜け、診察エリアを抜け。
 歩く。ほんの十数秒の時間が、数十メートルの廊下が、拒否したくなるほど長い。
 その廊下の突き当たり。
 幅の広いドアの部屋。
「お嬢さんはこちらです」
 その部屋のドアパネルを見、3人は一様に身体をびくりと震わせた。
 ICU……集中治療室。
「どうぞ」
 ドアを開かれて中に入る。しかし、看護師の足はそこで止まる。
 ガラス越しに並ぶベッドと、物々しいばかりに並ぶ医療機械類。
「あ……あの……由紀子は……由紀子は一体……」
「申し訳ありませんがご家族様でもこの先の入室はご遠慮していただく状態なんです。……あちらになります」
「え……」
 ガラスの仕切越の向こう、看護師によって示された由紀子の姿に3人はそのまま声を失った。
 ベッドに横たわり、輸血、輸液の真っ最中。しかも心電図装置が接続され、ベッド全体がビニールのカーテンで準無菌室処置にされている。
 両親から声が出ない。
「現在のところ状態は安定しています。詳しい状況は担当の佐藤が説明いたしますので、こちらへ」
 看護師はICUを出、診察室エリアへ一旦戻る形で3人を案内する。示されたドアパネルには“カンファレンスルーム”。すなわち、医師と患者、及び家族が話し合いを持つ場所。
 

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