アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-051-
「皆さん、申し訳ありませんが少し離れて下さい。この船は離陸時に暴風を出します」
レムリアは周囲に声を発した。
すると、漁船から降りた男性が。
「ねえちゃん」
「はい」
「ありがとうな。また行くんか。“おやしお”はどっか捨ててけ。邪魔だろう」
「でもこの船は皆さんの宝物……」
「エンジンボロボロ、エレキは水被ってパーだよ。むしろモールスで信号もらってありがたかった位だ。ボロ船よりも、それよりも、一人でも多く助けてくれ」(※エレキ=エレクトロニクス。無線など電気備品のこと)
男性の顔には微笑み。
ならば。
「はい!」
レムリアは頷いた。
そして、船は一陣の風を起こし、雪舞う猛火の海の向こうへ。ここまでで救助計96。犠牲6。
7
春とはいえ北国の3月は夕暮れの訪れ早く、雪という天候もあり船の照明を要求した。
男達とレムリアは、それぞれに武具を抱えて甲板先端に立った。
以下、5世帯7名の人々の救助の記録である。
川沿いの2階建てでは、波間に僅かに出ていた屋根の上、年老いた女性と男性が待っていた。女性は横たわった状態。
船を横付けし、昇降用スロープを延ばして屋根に下ろす。
「こっちへ!」
叫ぶレムリアに対し男性は困惑の表情を返した。テレパシーが教える『女性の呼吸がない』。
「ファランクス」
「おう」
大男二人が応じ、武具を背中に回して甲板から飛び降りる。水面は2階のその屋根ギリギリ。
一方その間にレムリアは船内を経由して保持ユニットへ回る。
「OK来て!」
運んで良い。レムリアが言った時、流れに乗って何かが来た。
イヤホンにピン。
『家庭用プロパンガスのタンクだ。栓は壊れてガスが出ている。危ないぞ』
「レーザ」
『熱で着火する』
「レールガン」
『着弾で一気に高温になる』
船長の否定語に。
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