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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-054-

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 レムリアは言った。アルゴ号は光子ロケットを動力とするが、その“光の圧力”を女の子の部屋ガラスに与えて震わせ、ガラスからスピーカーのように音を出そうというのだ。
『いいぞ』
 操舵手シュレーターの声。
「助けます。隣の部屋から入ります。少し下がって下さい」
 レムリアは言った。これで自分の声が彼女に聞こえたはず。
 果たして、女の子はハッとしたような反応を示し、ガラスから少し距離を取った。
 船の昇降スロープをベランダにかけ、レムリアはそこを滑り台よろしく滑走してベランダへ。
 次いで、船からレールガン発砲しアルミ塊一閃。隣室ガラスを粉々にする。
 波の水が入り始める。共にレムリアは走り込み。隣室へ入り、女の子を抱きかかえる。
「怖かったね。もう大丈夫」
 そのタイミングで、今度は女の子のいる部屋のガラスが破壊される。
 但し銃器は使っていない。転がり込んできたラングレヌスの巨体がそこにある。彼は自らの身体を肉弾としてガラスを突き破った。
「さぁ」
 すると女の子は机の脇の大きなクマのぬいぐるみを抱えた。
「くまちゃんもいい?」
「もちろん」
『急いで、波高が上がります』
 セレネの警告を聞き、ラングレヌスは女の子を抱きあげ、ベランダに掛けたスロープに載せた。
 次いでレムリアを抱き上げて載せる。
 そして自ら這い上がる。
「出せ」
 スロープを出したまま、船は浮上しようとした。
 その船底に、何か巨大なものが接触した。
 ぐらりと船は傾き、その衝撃でレムリアは船外へ放り出される。
 津波の中へ。水面上を漂うおびただしい数の油の粒、およびその黒さが、異様なまでにハッキリ見える。
 水しぶきと共に着水、その冷たさはすぐに判じた。および、僅かに水面下に頭が入っただけで、もう何も見えない。

 

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