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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-059-

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 見下ろした一帯は、黒くうねる水の中にあるか、赤い炎に包まれているか。
 絶望を迫るような様相。
『可能な範囲は完了。人命反応無し』
『救助者を避難所へ』
 炎から遠ざかり、高台の道づたいに飛んだら、大きな建物に人が集まっている。
 その時。
『悲鳴多数!学校が津波に飲まれます』
 伝えるセレネの声がそれこそ悲鳴。
『子供達を下ろして急行』
 スロープ部にウィンチはないので引き上げられない。

 

 

『川沿いに避難場所を設定したらしい。そこを飲まれた』
 冷静と言うより冷酷な相原のレポート。タブレットに映っているのはGPSの位置信号を発しながらバラバラに広がって行く携帯電話の一群。
『27名。全員の生体情報を確保した。体温と心拍で追跡を続ける』
『了解。シュレーター。船体を左舷を下に45度傾け。その瞬間に我々は船内に戻る。戻ったら潜航する。アリス、ラング、抜かるな』
『おう……坊主、ちょっと我慢な』
 大男達は抱えた子供達を強く抱き締めた。
 左舷を下に船体を“ねじる”。
 翼のように突き出たスロープはスッと下方に移動し、ぶら下げられていた男達よりも下になる。
 重力で落下し始める男達の下にスロープが入って受け止める。男達は直ちに船内に戻る。
「君たちはこっちへ」
「任せた」
 レムリアは子供達を預かり……生命保持ユニットは満員なので自分の個室に通す。
「他の子供達が海に落ちた。この船で潜って助けるので、その間、ここで待ってて」
『スロープ格納よし。潜航可』
『潜航を許可する。片っ端からすくい上げろ』
『アイ』
 アルゴ号は飛行時、光の圧力で形成したチューブの中を進行する。超高速で移動するので“障害物を避ける”時間など無いからだ。この原理を援用し、光で水を押しのけて潜航が可能である。なお、推進には、光子ロケットでは高温高圧で水蒸気爆発を起こすため、離着陸時の風圧発生システムと同じ原理で水を吸い込んで噴射する。フォトンハイドロクローラと称する。

 

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