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天使のアルバイト-089-

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 エリアもショックの度合い自体は両親と同様である。今にもそれこそ頭の血が引く脳貧血を起こし、昏倒しそうだ。
 しかし、彼女には、そうなることなく意識の正常性を支え続ける、確たる理由がある。確かに、再生不良性貧血には症状に各種の表れ方があり、由紀子の場合、その最も重篤かつ急速なものであろう。
 でも、それでも治療法は存在するのだ。
 唯一つだけ。
 そこで、母親が勇気を振り絞るように口を動かす。
「でも……治る……ですよね」
 医師はゆっくり頷いた。
「ええ、ただ、薬では……」
「骨髄移植」
 エリアは言った。それが唯一だが、容易ではないことも知っての上で。
 両親と担任がエリアを見る。
「そうです」
 医師は言った。両親の目に生気が戻る。
「由紀子さんの症状の場合、治療に有効なのは、こちらの彼女が言った骨髄を移植し、新たに定着させる方法です」
「移植……ですか」
「そうです」
 両親の顔に笑みが浮かぶ。
 しかし医師は笑みを見せない。
 その理由をエリアは知っていた。
「HLA、ですね」
「そう」
 エリアの言葉に医師が頷く。
 説明を求めるように両親が身を乗り出す。
 医師は少し考えて。
「血液に型があり、型が一致しないと輸血できないことはご存じですね」
「はい」
 と、父親。
「骨髄の場合も、体の中に他の人の細胞を入れるので、同様の型合わせが必要になります。この場合の型は免疫に起因するもので、ヒト白血球抗原、英語の頭文字を取って略してHLAと呼びます。ここまでよろしいですか?」(Human Leukocyte Antigen)
「はい」
 父親が返事する。医師は頷いて続ける。
「血液型の場合、そうですね。情報枠が二つあります、子どもは両親からそのうち一つずつをもらい、二つ持ちます。そして、二つの情報が揃ったところで、一つの血液型として確定します。この時、枠に入る情報はAかBかOの3種類。すなわち、3つの情報から1つをもらいます。
 これより例えば、AとAをもらえばA。BとOをもらうと、Bの性格が強く出てB。AとBをもらうとABです。よろしいでしょうか」
 

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