アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-060-
潜った津波の中はおよそ人間社会の一部とは思われなかった。
がれきやクルマと言った人工物はもちろん、流された木々や、海底にあったとみられる岩などが“生き物のように”漂っていた。軽々と、ふわふわと。岩など風船のように上下に舞うが、実際何トンもある。そっと触れるように自家用車の屋根に当たり、屋根がへこみ、ガラスが割れる。
津波に飲まれた遺体は損傷が激しい場合が多い。その理由はこれらによる。
すなわち、海中に飲まれた場合、存命の可能性は下がる。
しかし確率は否定しない。レムリアは目をこらし、全ての意識感覚を用い、船が圧力で押しのける波とがれきの向こうを探した。人体と思しきは直下に船を差し入れ、その部位だけチューブ構成する光の圧力弱める。
『7番』
ざぁっという水の流れと共に子供の身体が落ちてくる。
大男が甲板で受け止めてレムリアに託す。番号は把握した27人に識別用に振った物。
息をしていない。
心臓が動いていない。
マッサージを開始する。AEDを繋いで。
『レムリア。皆さんです』
副長の声に顔を上げると、今さっきすくい上げた人たち。
「手伝います」
断る理由は無かった。
「お願いします。次々子供達が来ます。AEDは3回まで。それで……ダメならこのタグの黒い部分までをちぎって足首に巻いて下さい」
タグ……それはトリアージ用の物である。荷札の先端に緑、黄色、赤、黒の4色の帯があり、要救護者の状態に合わせて所要の帯を残して切る。
(wiki)
黒は死亡。
『12番』
女の子。大丈夫。生きているし意識はある。
「ここは……」
「救助船です」
「レムリアこちらへ」
甲板への出入り口に副長セレネ、船長アルフォンスス。
二人とも足元に毛布を積み上げている。ちなみに、毛布は基本、防寒用ではあるが、“包まれることにより安息感を得る”という効果ももたらす。
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