アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-061-
「お願いします」
レムリアが頼むと相原からピン。
『津波症候群に注意』
「承知」
レムリアは即座に返し、船長副長には、無事な子にもタグを持たせるよう依頼する。
津波症候群。書いたように異物有毒物を含む海水であるため、飲み込むことにより呼吸器や内臓に後から疾患を生じる場合がある。このため、手術や洗浄が必要となる。
その可能性があるとしてタグを持ってもらう。
『21番』
意識の無い女の子。
地道に救って行く。タブレットには船の燃料僅少を示す警告が出っぱなし。
意識ある割合は3割と言ったところか。AED3回で心拍回復せず二人。それ以前のいわゆる社会死の状態の男の子ひとり。損傷が激しい。
船のコンピュータがピン2回。……燃料がありません。潜航可能は2分。抑制モード移行……。なお、抑制モードは燃料消費を最小限に抑えるもので、推進は人力操舵のみ。他の機能は照明空調以外全てオフとなる。
『あとは?』
「ひとり」
『水面上に感あり』
浮き上がる。もう日が落ちて真っ暗である。照明を点けると、漂う漁船とタンクの間に瞳のきらめき。
「がんばって!」
背後からレーザ光線が空中を伸び、タンクを照らす。識別用に船長が放った物である。果たして海上の瞳、9番の男の子は反応した。
浮き輪を投げて掴まってもらう。スロープを出して、引き寄せて。
スロープの上から浮き輪を掴む。
『後ろ!』
相原の警告。
振り返り超視覚が捉える流されてきたタンカー。
レムリアはかろうじて男の子と共に船内に転がり込み。
今、アルゴ号は男の子を救うため、光の圧力を弱めていた。抑制モードであり、探知システムも感度を落としていた。
ブザーと共にタブレットに表示が出るが手遅れ。大きな衝撃がアルゴ号を捉える。レムリアは通路を突き飛ばされて何度も転がる。
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