アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-062-
赤いランプが通路のそこここに点いた。そんなのは初めてである。つまり、過去経験の無い異様な事態が生じた。
タブレットを見る。赤バック白抜き文字で“リフレクションプレート破損”。
船尾はタマゴの殻の様にパカッと開き、パラボラアンテナ状の反射パネルを形成する。そこに光ビームを当て、船は前進するのであるが、それをタンカー衝突で損傷した。
光子ロケットエンジンを失う。すなわち。
『空中推進能力喪失』
妙に冷静な操舵手シュレーター博士の声。しかし船長は次善を提示。
『了解。以後ハイドロで海上を推進する。燃料節約のため衝撃抑制は不可能。総員衝撃に備えよ。相原、近場に避難可能な場所はないか。乗船中の方々を送り届け、本船も待避したい』
問いかけに相原から応答は。
『そのタンカーはそのまま流されると津波で孤立した集落に打ち上がる。若干高台になっていて、応急避難所にしていたらしい。集落には携帯電話の位置情報が数件存在する。取り残された方がいると見られる。現在浸水高1メートル。救出およびタンカー回避可否検討願う』
ここで普段なら、それこそエンジン使って押しのけてしまえば良いが、そのエンジンは使用不能。
船長が言う。
『シュレーター。漂着予想地点に先回りせよ。総員、残った燃料全てを投じて危機を排除せよ。手段あるか』
そこにピンで割り込み。相原。
『僕だ、加速コイルとハイドロ推進用電界付加ユニットを水中に出せ。電磁加速水鉄砲だ』
『は?相原、言いたいことが判らんのだが』
『暴走時非常切断を中途半端に使う……』
船長の問いに相原が答えようとし、シュレーターが続きを言った。
『言いたいことは判った。主機関を露出してフレミング条件に整えて海水を電磁加速しろと言うことだな』
『そうです』
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