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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-066-

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「大丈夫ですか!私たちは救助隊です。医療設備を積んでいます。人工透析が必要な方や、常用薬が切れて困ってる方はいらっしゃいませんか!」
 甲板から夜闇に声が響いて更に人影あり。その家屋、の2階でライトがちらつく様が見え、人々が降りて出て来る。子供がひとり、お年寄り8人くらい。後は40~60代というところ。全員で15人。
「我々は救助隊です。地震の報を聞いて馳せ参じました。エネルギ切れて動けなくなりまたが、中は暖房と、多少の医療設備があります」
 船内は存命19。死亡8。
 ここの15名を加え、総計34名。
「お姉ちゃんお腹減った」
 男の子に言われ、ああ、と思い出す。一番肝心なこと。傍らで母親と思しき女性が慌てるような仕草。まぁ「食い物をくれ」みたいな物言いは先進国水準だと“恥ずかしい”が先に立つだろう。でも、今は非常時。
「待って」
 レムリアは応じてタブレットを操作する。“在庫確認”である。通常の活動は大体一晩なので、サンドイッチとか持って乗り込むが。
 今は無い。その代わり、緊急用の備蓄はある。しかも。
「“そば”でも作りましょうか。問題はそばの実、という状態ってことなんですけど。すいませんそこからどうやって麺に……」
「そば?」
 その母親らしき女性が反応。
「うどんそばのそば?」
「ええそうです」
「ああ、それなら『そばご飯』が作れるわ。鍋はある?」
 女性が笑顔になった。
「お湯と加熱電力は用意できます」
 答えて再度タブレットをスクロール。鍋、鍋、鍋って持ってたっけ……。
「鍋はウチのが多分」
 応じた男性は民宿経営、という。懐中電灯を頼りに濡れた砂浜を宿屋へ向かう。
 道具と熱源と食材が揃った。
 全員に対応するため操舵室を開放する。油圧の切れた扉を開き、大スクリーンとコントロールコンソール。大学講堂のようにひな壇を構成するデスク列。

 

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