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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-075-

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 ちなみに、遺体から奪い取るという発想自体は、近代日本人は思いつかないであろうとレムリアは思っている。
『畜生はどの文化圏にもいるし、入り込むさ』
 相原が言った。そうだ、という肯定の意が生じ、胸の痛みが潰れるように消える。死という結末は後悔するに値しないであろう。相手の数が数である。まず武器を奪う、無力化する以外に選択肢はあるまい。相手はそれを避けて死んだ。それだけだ。
 それだけだ。サッと結論づけたが自分は残酷な考え方だろうか。沢山の“あっけない”死に接してマヒしたか。
『ラング帰投せよ。膜はそのまま火除けに置いておけ』
 船長の指示にレムリアは我に返る。
 自分の心理などどうでもいい。
「警察力が低下してるわけだね。だったら寝ずの番がいるね。似たようなのまた来るかも知れない」
 レムリアは言った。それこそ無法の地の体験はいくらでもある。体験からのアンサーがこれ。
「それなら俺たちが……って言っても聞かねぇだろうなおめさんは」
 アリスタルコスが隣でニヤッと笑った。
「よくご存じで」
 レムリアはニヤッと返した。そして気付く。ウソでも何でも“笑い”の余裕が出来た。
「だけどな魔女さん。おめぇさんには子供達のそばにいて欲しいってのはあるんだ」
 優しい嘘。レムリアはフッと笑った。本当は少女である自分には戻れと言いたい。されど、子供扱いになる。結果のアンサー。ちなみに救助した子供達はそれこそ安心と疲労の故に深く寝入っている。PTSD的症状が例えば悪夢や不眠として現れるのはむしろ明晩以降。
「判った。戻るよ」
「任せろ。こっちは人生こんなのばっかだしよ」
 レムリアはそれを聞き、大男達を置いて船内への階段を降りて行く。

 

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