天使のアルバイト-095-
『ずっと輸血。だけど、血球の減少が止まらないんだって。かといってあんまり強い薬使うと逆に感染症にかかりやすくなるらしいの……先生も悩んでらっしゃるみたい。人によって症状や副作用が違うんだって。だから本来は幾つか試して一番効果の高いものを選ぶそうだけど……』
母親が言葉尻を濁し、自分も言葉も出ない。一体、どうすれば、どうすればいいの。何か私に出来ることはないの?
由紀子ちゃん!
「じゃあ……意識はまだ……」
『まだ。熱が下がらない。40度近くあるって。感染症の影響だって。抗生物質が徐々に効いてるとはおっしゃっていたけど。これが収まらないことには次に進めないって』
「おばさん……」
『泣いちゃダメ。由紀子だって必死で頑張ってるんだから。あんたがそんなじゃ、あの子泣くよ』
「うん。判ってる。判ってるけど……」
『あなたはあなたに出来ることをやってくれればそれでいい。お医者に出来ること以上が私達に出来るわけないんだから。私達は、あなたのこと、すごく、すごく感謝してるんだから』
母親の言葉が沁みる。何か言いたいが涙が止められない。
すると。
『エリカ!』
電話の向こうの怒鳴り声。
『いつまで泣いてるの!由紀子は死んだわけじゃないんだよ!私達だって我慢してるんだから!いつまでも泣いてると怒るよ』
「!」
エリアはハッとした。
そう。一番泣きたいのは、多分ご両親。
それでもお店の日常業務をこなしているご両親。笑顔でお客さんを迎え、生活を維持するために働いているご両親。
「信じることあきらめないこと、これが技術以前の治療の基本です」
団体の代表は両親とエリアにそう言った。
確かにその通りだ。エリアは頷いた。同意した。しかし、つけ込んでくるような不安を押し返すまでには至らなかった。そのまま迎えてしまった今日がこの結果だ。
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