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天使のアルバイト-096-

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 引き替え、両親の強さはどうだ。
「……ごめんなさい」
『怒鳴ったりしてごめんよ。あんたの気持ちも判ってるんだ。でも今は頑張る時。信じること、そしてあきらめないこと』
「うん」
『それじゃね。人様には“関係ないこと”なんだから、無理言わないの。いいね』
「はい」
『午後も頑張って』
「はい。すいません」
 電話が切れた。
 エリアは下唇を強く噛んだ。
 全く持って言われた通りである。くよくよしたところで、状況が変わるわけではない。
 由紀子も頑張っている。自分も頑張る。出来ることは、ただそれだけ。
 そして、仕事は仕事で私事とは別のこと。ご両親がお店のお客さんに泣き言を言っているわけがない。
 この店にいる間は、それはそれ。これはこれ。
 その時。
「エリカちゃん」
 同じレジ係の22歳フリーター娘から声がかかった。
「はい?」
「お客さん。受付のところ。……ねぇ、ちょっと今日大丈夫?変だよ」
 顔を上げたエリアに、フリーター娘は用向きを伝えると、心配そうに表情を変えた。
「大丈夫。気の早い花粉症だから」
 エリアは言うと、コップ一杯の水だけ飲んで社員食堂を出た。
 通路を通って店内に入る。
 小走りで店の入口、受付へ。
 と、そこにいたのはベビーカーを押した若い母親。
 そして。
「あ……」
 エリアはその赤ちゃんを見てすぐに気付いた。
 あの時の子……真夏の車中に置き去りにされ、瀕死の状態でエリアが救い出したあの赤ちゃんである。
「そうか~、元気になったんだね~」
 エリアは思わずしゃがみ込み、赤ちゃんに指先を出した。
 赤ちゃんがはしゃぐように笑って手を伸ばし、エリアの指先を掴む。
「あの……助けてくれたのに……お礼もしないで……」
 若い母親が恥ずかしそうに小声で言った。
 エリアはすっと立って母親を見た。相変わらずの濃い化粧に金髪、厚底サンダル。
 

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