アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-082-
「お姉ちゃん、誰か来るぜ」
発見の声に振り返り、指さす先を見ると、近づいて来る手こぎボート有り。
信用ならぬ。超感覚の警告。
「ボランティアてす。おてつらいします」
書き間違いではない。日本語の発音がおかしい。そして一人で手こぎのボート。
若い女性である。レムリアは超感覚が勝手にバリアを張るのを感じた。怪しいと直感的に思った人物を近づけたくないという心理は誰にも作用するものだが、超感覚の次元ではバリアの体を成す。
『どうしました?』
テレパシーで繋がっているセレネから反応。レムリアは耳穴からピンを送って大男達に注意喚起。同時に胸元タブレットのカメラで録画開始。
『どうした』
この問いは船長。
「介抱泥棒の類い。多分」
小声で答えていると、女性はボートで岸に上がった。件の漂流している遺体に目もくれなかったことでテレパスの回答を確信する。
「私どもは食料も医薬品も充分です。行政の一次対応が整い次第移送します。どうぞ他の困っているところへ」
穏便にお断り。とは言え、行かれたら先方が困るのだろうが。
「てもあの、わたし看護師」
てめえ泥棒だろうが。一喝するのは簡単である。が、後々を考えると証拠が欲しい。及び、今の看護師という自己申告はウソである。
一計。
「あら、だったらご自身の体調が優れないのはお気づきではないですか?徹夜であちこち回ってらしたのでしょう。ちょっと体温測ってみませんか?」
ウェストポーチから体温計出して近づこうとすると、果たして女性は身を翻して逃げだそうとした。
流れ着いた瓦礫に足を取られて転ぶ。その胸元ポケットからばらばらとこぼれる金属の輝き。
多数の指輪。
「……!!」
女が何事か叫ぶ。しまった!系の言葉と思うが何を言ってるか判らない。レムリアは12の言語を操るが、そのレパートリーに存在しない。反射的に出た母国語というところか。
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