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天使のアルバイト-100-

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 それと同じ現象が今、起きた。
 刹那。
 気が付くと、直近にそれこそ“まんまる”に目を開いた女の子の顔がある。
 背後から接近する光芒と圧力。
 橋から走って逃げる時間などない。
 躊躇は一瞬たりとも許されない。
 エリアは女の子の手を取り、川面に引き込んだ。
 二人の身体が宙に舞う。
 線路を離れ、その直後、急ブレーキに伴う摩擦の火花を散らしながら、通勤快速が二人のいた位置を通り過ぎる。
 着水の音がして水柱が上がる。
 但し水深は深くない。女の子はバランスを崩してしりもちをついたが、エリアは身が軽いこともあって立ったまま降り立った。
 すぐに女の子の手を引き、立たせる。
 長々と、ブレーキライニングのキーキー音を響かせ、橋梁上で、がくんと、電車が止まった。但し、先頭は遙か向こう、橋の上にあるのは、10両編成の9両目。
 乗客達が何事かと窓を開け、こちらへ顔を出す。
「おい。大丈夫か」
 誰かが言った。
「はい、大丈夫です」
 エリアは答える。
 と、列車の前後方向からそれぞれ砂利の上を走ってくる音。
 車掌と運転士。
「おい!」
 列車後尾から出て来た車掌が、二人を見つけるなり怒鳴る。怒りを帯びた声と心配を含んだ表情。
「大丈夫です。私の友達です。ご迷惑をおかけしました」
 エリアは機先を制して答え、深々と頭を下げた。
「責任を持って連れて帰りますから……」
 車掌は腕組みして二人を見、そして舌打ち。
「しょうがねえな……お客様!外へ出ないでください。安全が確認されましたのですぐに発車します」
 車掌は電車の前後に向かって大きな声で言い、息せき切って駆けつけた運転士に説明。
 二人がこちらを一瞥。
「すみません!」
 エリアはサッと頭を下げた。
「全く……」
 運転士が言い、二人は何やら相談。
「ちゃんと帰れよ」
 

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