天使のアルバイト-102-
実は今、エリアは超感覚を用いた。女の子の事情もそれにより判じた。
封印されているはずの、彼女本来の力が働いたのだ。ただ、エリアにとって、それは元々当然のことであるため、変化していることには気付いていない。
「あなたは彼を好きかも知れない。でも、彼はあなたが好きではない」
エリアは把握した状況をいきなり口にした。女の子の身体がびくりと震え、心臓の拍動が乱れるのが如実に判る。
その身体をエリアは強く抱きしめる。
「最後まで聞いてちょうだい。彼はあなたに痩せろと言った。でもそれは彼が、女性を外見でしか見ていない証拠。中身のない人間は、自分の中身を見られたくないから、相手にも外見だけが全ての存在を求める。
だから、私には判る。その可愛い彼女もいつか飽きられ、捨てられる。慰めなんかじゃない。軽薄な人間には軽薄なことしかできない。でも、あなたは違う。ボロボロになるまで無理して痩せようとして、死のうとまで思った。それはあなたが真剣に物事を考える女の子である証拠」
女の子の身体から力が抜ける。
「今すぐ諦めろとは言わない。でも、命捧げるほどの相手じゃあ絶対にない。彼のために無理をして……それで安らぎがあった?不安と、闇の縁のような絶望感に苛まれていただけじゃないの?」
女の子が次第にエリアに体重を預けてくる。
「死ぬほどの勇気があったら生きてみようよ」
エリアは言った。まるで女の子が旧知の友であるかのように親しげに。
「人間は死ぬために生まれてくるんじゃない。それだったら最初から生まれないのと同じ。でも生まれる。それは生きろということ。だったら徹底的に生きてみようよ」
女の子はそこでエリアに目を向けた。
赤くなり、腫れ上がった瞼が、しかし希望の夜明けが来たように開かれる。
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