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2017年3月29日 (水)

天使のアルバイト-103-

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「徹底的に……生きる……」
 女の子がか細い声を出す。今にも割れそうな、薄いガラスのような、声。
「そう。ちょっと失敗したくらいで死ぬなんて馬鹿馬鹿しい。あなたには未来がある。そこに多くの出会いが待っている。その中にはあなたを理解してくれる人が必ず現れる。今、こうして私があなたに話していることが何よりの証明」
 エリアは女の子の両手を持った。
「生きていればいろんなことが出来る。だから、生きること。これが何よりまず大事なこと。……もう少し早くあなたと会えれば、あなたと私の友達、きっと仲良しになれたでしょうね」
 エリアは言った。
 女の子の目が円くなった。
「あなたの友達?」
「そう。私の友達……重い病気で今夜乗り越えられるかどうか」
「え……え……?」
 動揺が女の子を捉える。
 いきなり言うべき事ではないかも知れない。でも、躊躇なくエリアの口をついて出た。
 それは抱える思いを誰かに聞いてもらいたいという意識の反映かも知れぬ。しかしそれと同時に、“死”を考えたこの少女には、話しておくべきという意識も存在する。
「たくさんの生命維持の機械と、医師や看護師、移植医療の慈善団体が、24時間休まず、八方手を尽くして、彼女を助けようとしてくれてる。
 ひとりの女の子を救うために、ひとつの命を救うために。
 命とはそういうもの。消してしまうのは簡単、でも消さないようにするのはとても難しい。
 それでも……あなたは、あなたにそんなひどいことを言った彼のために、あなたの母から授かった命を絶ちますか?それほどの価値が彼にはあるのですか?」
 エリアは言うと、女の子を腕の束縛の中から解き、目の前に立たせ、まっすぐに顔を見た。
 ちなみにこの時、二人の服と髪はすっかり乾いていたのだが、二人ともそのことに気付いていない。
「あの……」
「何も言わなくていい。ただ、これだけは約束して。絶対死のうだなんて思わない」
「…約束します」
 女の子は、言った。
 エリアは笑顔を作った。
 これで多分、この彼女は大丈夫。
 携帯電話が、電子音で、エリアを呼んだ。
 

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