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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-085-

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『佐橋先生。“あんパンの騎士”です。当社でヘリを手配しました。可能であれば先生の病院でピックアップさせていただいて』
『それはありがたい』
 話は決まった。
 小一時間掛かるというので、その間を利用し改めて船内避難者の健康を確認し、名簿を起こす。再確認の意を込め乗船者34名。このうち子供は全員小学生で8名。ここに学習塾が“あった”ことによる。いずれも子供用携帯を持っており、最小限の親との安否確認は済み。
 ただ、ひとり発熱している子がいたので、熱冷ましを飲ませてベッドへ。死線をくぐり抜ける極限のストレスであり、体調を壊すのは変ではない。
 食事を取る。温かいご飯と味噌汁、焼きたらこ。今日この時間、この地域で、こんな充実した食を取れる贅沢はあるまい。
 今日は体力を要するだろう。しっかり食べる。腹が減っては……とは相原に何度も聞いた。ただ、液晶画面とボタンが並ぶアルゴ号の自席コンソールで味噌汁とは思わなかった。
 後片付けしていれば1時間などすぐ経つ。
「ヘリだ」
 プロペラの音がし、船長が言った。船の識別装置が陸上自衛隊だと言って寄越す。機体前後に2つのローターを備えた大型ヘリだ。
 無線のやりとりでは、スペースがないのでホバリングしてロープで荷と人を下ろすという。風よけを兼ねて乗船者皆さんには船内に入ってもらって。
 医師に会うべく風の舞う甲板に上がると、予想だにしなかった作業服姿の相原。及びプレハブ小屋のようなものが下ろされたところ。
「学……」
 張り詰めていたものが一気に解けて、思わず走り出ししがみつく。それなりに気を張り、最高度の緊張感で事に当たっていたと改めて思い知らされる。
「何で来たの?……力が抜けちゃう。頼っちゃう。だめだよ……」

 

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