アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-092-
彼女はその怯える目を一つずつ睥睨し、
「黙ってろ。お前らもこうするぞ……船長終わりました」
『了解。相原君、彼らは特定の国からの侵入とみられるが、こんななのか、彼らは』
「こんなですよ。カネのためには手段をいとわず良識や恥という概念は通用しません。うそつき、泥棒、乞食です。ウチの会社にも2倍で買うとか言って取引持ちかけて来ますが、こことのビジネスは外為法を盾に片っ端からお断りしてます。すると仕舞いに直接会社まで押しかけて脅してきます。ワタシ闇に通じますって教えてくれるんだからありがたい。だから殺せってんですよ。非常事態だどうせ捜査なんかされやせん」
巨大な銃器を担いで「殺せ」と言い放つその男の瞳は冷酷であり、平和な国日本の男、自分を愛す穏和な男の姿では無かった。ただ、この銃器達は救助用であり、人体センサーによって“殺人”はできない。
私は彼をそこまで変えたか……彼女が見ていると、冷酷な瞳は鈍く光るような笑みを刻んだ。
「ショックか?でも父親って家族のためなら殺すぜ。自分の家族と服役、どっちを選ぶよ」
「サムライ、か」
大男ラングレヌスの指摘にレムリアはハッとした。
「それはどうでしょうか。ただ、お前はオレの女だ。やれることは皆やるさ。さてエンジン復活させるべ。発電機の燃料がそろそろヤバイ」
『相原それなら大丈夫だ。船のソーラから電力回してGM運転してる』
これはシュレーター。
「了解。多分夕刻には動けるようになると思う。医師、警察か自衛隊と組んで近場で病院船が欲しそうなところを探すんだ」
レムリアは相原をじっと見、途中で自分への指示だと気付いてハッと我に返った。
「は、はい」
「笑顔で行こうぜ」
ニヤリと笑う。唇の端に含んだ強気は模した顔文字そのものである。
そして理解する。日本が過去数千年、起きたであろう類例大災害を越えて国家国体を維持し続けていられる理由。
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