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天使のアルバイト-104-

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17
 
 呼び出し続ける携帯電話。
 だけどエリアは受けようとしない。
「あの……電話……」
 女の子が言う。エリアはポケットから、とりあえず出すだけは出した。
 表示されてる発信者は不動産屋。
 内容は判っている。病院に行っている由紀子の父から、待機していた母親に電話があり、母親がこちらに電話したのである。
 もちろん、“何かあった”以外の何ものでもない。
「……まさか!」
 女の子が気付いたようである。
 エリアは頷く。
 そして、諦めたように、通話のボタンを、押した。
「はい……」
『どうしたの?随分鳴らしたのに』
 性急な母親の声。極めてナーバスであることが判る。
「ごめんなさい」
『まあいいわ、あなた今どこ?』
「電車の橋のところ」
『由紀子と会ったところね。そこにいて。迎えに行くから』
「あの……由紀子ちゃん……」
『何も言わないで!……車の中で話す』
 質問を発しようとするエリアの言葉を、母親は強い調子で遮った。
 それはすなわち。
 訊かれたくないこと。
「判りました」
 エリアがそれだけ言うと、電話が切れた。
「あの……」
 女の子が心配そうにエリアを見る。
「私には何も出来ないかも知れない。でも、彼女のそばにいたい」
 エリアは女の子の目を見て言った。
 そう。たとえ電話がそれだとしても、目を背けようとは思わない。彼女の友達と自覚しているからこそ、きちんとそばにいてあげたい。
 友達だからこそ。
「生きるということは、とても素敵なことだよ」
 エリアは小さく笑って、女の子に言った。
 少しあり、路地の間からタクシーがゆっくり走り出て来た。
「エリカちゃん!」
 窓から母親が顔を出して手を振り、タクシーが止まる。
「じゃ!」
 エリアは女の子に手を振って走り出す。
「うん……あの、私……祈ってる!」
 女の子の声がエリアの背中に向けられた。
 エリアは一旦立ち止まり。
「ありがとう!」
 女の子にVサインで応じた。
 

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