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天使のアルバイト-107-

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 しかし。
「わ……」
 エリアは目を円くし、思わず声を出す。
 人相が変わってしまっているのである。むくんで膨れた顔。血の気のない肌の色。
 むくんでいるのは抗生物質の副作用。
 その時。
 計器がピーという無機的な電子音を発し、赤ランプを点滅させる。
 何が起こったか、訊くまでもなかった。
「吉井君」
 医師が一行を先導してきた看護師を呼ぶ。その傍ら、由紀子の腕を取って脈を見、次いで布団を取り、浴衣姿の由紀子の胸部に手のひらで触れる。
 呼吸と鼓動の確認。
「心肺停止」
「反応ありません」
 医師が言い、看護師が計器を見て続けた。
 医師は頷いた。
「電気」
「はい」
 その声に看護師がベッドの下から何やら取り出す。小型クッションと、そこから伸びたケーブル。
 電気ショック(除細動装置)の電極パッド。
 二つのパッドを浴衣の下へ入れ込んで肌に貼り付ける。更に付属ケーブルを伸ばし、心電図が表示されている装置に接続。
「完了しました」
 看護師が報告。
「了解。1回目」
 医師が喚呼し、装置の大きな赤ボタンを押す。
 ビーというブザー。
 電気が流れたのだろう。由紀子の身体が大きく跳ねるように動き、心電図の波形が大きく乱れる。
 しかし鼓動を示すリズミカルな波形には戻らない。
 看護師が手動ポンプを由紀子の口にあてがい人工呼吸。
「2回目」
 医師の声に看護師が少し離れる。
 再度ブザー。波形の乱れ。
 変化なし。
「……最後です。3回目」
 医師は目を閉じ、息を詰め、両手で、ボタンを押した。
 ブザー。
 そして波形の乱れ。
 由紀子の身体が跳ねて、止まる。
 ベッドの脇から腕が垂れる。
 垂れた腕から輸液管が抜け、液が床にポタポタ。
 波形。
 横一線。
 少しの時が流れた。
 医師は、再度呼吸と心拍を確かめ、次いでペンライトを取り出し、閉じられた瞼を開き、瞳を照らした。
 

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