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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-099-

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 リストバンド型が4つ、トレース番号7から10番。
『登録されました』
 コンピュータが声を発し、大画面の隅に地図が出てトレーサーの位置を表示。
 その時。
「なぁ船長さんよ、この画面、パソコンみたいに写真にできるけ?」
 ゲンさんが訊いた。ネット地図は同じ縮尺で空撮が表示できる。そして、要求された空撮はリアルタイムを要求するものだろう。
 操舵室内が静まりかえった。この災害の“全容”を映すことになる。
 相原はコンソールからキーボードを引き出しカチャカチャ。
「あ、面倒だったらええよ」
「いえ……」
 リターンキー。そして。
 画面は、映し出した。
「え?」
「これは……」
 気仙沼を映す。町は津波と大火により。
「どこがどごだがわがんね。海岸線が変わっちまってる」
「ここが45号線です。この道路で津波が止まったものと」
 ゆるいカーブを描く堤防様の構造物をマウスでなぞる。言われてみれば速度の出せる道路だと判る。
 そこから逆に元の姿を想起する。その作業は“単なる事実”の故に、事態の深刻さを際立たせた。
「あんで津波にじゃぶ漬けで火事になんだ?」
「これ煙だろ。まだ燃えてっし」
「津波の上に油膜が出来てしまったとお考え下さい。車両や船舶の燃料などが由来です」
「炎の津波ってか」
「ええ、そうです」
 炎自らが波となって、波が炎を乗せて内陸深くまで覆って行く。
「寺に明治ん時の絵があって見たことあっが(有るが)やっと判った。こんななるだな……」
 男性の嘆息に、相原は画面の隅に石碑の画像を一つ出した。
「我々が見直すべき行動が二つあることをこの事態は教えていると考えます。ひとつ、現在の技術でも万能ではない、防波堤が高かろうが過信せず、自然災害に関する父祖の言い伝えは必ず守ること。そして、父祖が伝えたかったことが、言語や環境の変化の故に誤解されないよう、現在の見識で父祖の言葉を見直し、科学的な考証で説得力を与えて理解させること」

 

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