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アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-100-

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 相原は自らにも言い聞かせるように言った。例えば土石流災害を“蛇”と表現するのは日本のあちこちに見られるものだが、これはチューブ状をなして斜面を高速で駆け下る土砂の姿を現す。蛇のように見える、それは水だけでなく“中身が詰まっている”のであり、夥しい量の土砂が含まれた状態、と解釈できる。これは“蛇”という語だけでは現代人にはイメージが掴めず、正体を現代の認識に置き換えることを要求する。また、津波の場合、揺れの大小にかかわらず逃げろとよく言われる。これは津波地震(震源が遠隔地であったり隣のプレートであるため、地震動がさほど大きくならないもの。津波自体は地殻変動の量によるため、マグニチュードなりの高さになる)を意識しており、応じて現代でも震度だけで判断する危険性の周知を要求する。また、津波の前兆として引き波に言及している文献石碑(まず波が引く)が多いようだが、これは地殻変動で隆起し海岸線が後退したもの、第1波が引き波であったもの双方が混じっている上、押し波で始まる津波もあるので、修正が必要、と言える。“引き波にならないから問題ない”は危険ということである。
「ありがとよ、あんちゃん」
 トレーサーを手首に巻いた漁師の男性が相原に言った。
「んだば降りるべ。この人達はこの船でまだ生きてるかも知れない人たちを助けて下さるってんだ。引き留めちゃいけねぇ」
「んだな。おら達は降りるで。みんなを避難所へ頼むぜ」
「承りました」
 残って守るという4名が下船する。相原が昇降スロープまで案内。
「では。お気を付けて」
 夕暮れの気配が漂い、空気が冷たい。
 そして“焼ける”臭い。
「お前さんらもな……一人でも、多く、助けてやってくれ」
「はい……操舵室、安全距離確保しました」

 

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