アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-102-
『記憶しておくか?』
その意味、ご遺体は後で収容するので場所だけ把握するか?
生きている方が優先。極限の状況における鉄則である。
「お願いします」
『登録した。追尾は難しいかも知れない』
ガレキ漂う湾内に入って行く。船体のあちこちで様々なぶつかる音、こする音。
なお水中推進の動力は“ハイドロクローラ”という。水を一旦取り込んで光子圧力で加速噴出して速力を得る。これはスクリューに関わる諸般の心配や懸念(絡まり・切断)が一切無いことを意味する。
イヤホンにピン。
『絶対方位353携帯電波補足。距離52メートル』
「レムリア!」
「意識は感じません……」
50メートルなら自分のテレパスで充分感知する。すなわち。
「近づいて確認したい。許可願う」
傍らで相原が言った。結果は一つだが無情なことはしたくない。そんな自分の意志を汲んでくれたか。もちろん、その1分1秒が本当に必要な人には無駄な時間と判っている。
だが、だからってさっさと諦め、決めつけていいのか。
『許可する。ガレキ除却して接近せよ』
船首が向きを変える。その方角と距離には傾いた家屋がある。船に赤外線でスキャンさせたら2階建てで、1階はひしゃげた状態で水没、2階が屋根傾いて水面に顔を出した状態。
『人体鼓動パルス、体温反応、人体形状いずれも感なし』
それはセンサとコンピュータ、それを見ている操舵室の判断。
「携帯電話だけ動いてるってか」
相原が言う。船は近傍まで接近し、レムリアの視力で中が見える。机と倒れた本棚。散らばった書物。書斎か。
『CDMAの捜索電波を検出。電話が電波探して動いただけだ。家屋内は無人と判断する』
次へ行くんだ。レムリアは歯を食いしばって己を叱咤した。
その時。
-誰かいるの?寒いよ。
テレパスが捉えた心の声。人間ではない。
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